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2019年9月7日土曜日

『Planet Blue chronicle』年表「戦史室」

liya

 このたびは、『Planet Blue chronicle』をお読み下さり、誠にありがとう御座います。本書の編著において、本篇の原案・原作を執筆して頂いた八幡金吾景綱(やわた きんご かげつな)氏から、PCの故障に伴うデータ破損などの御連絡があり、事実上の休載にせざるを得ないと判断致しました。本稿では、そのお詫びを兼ねて、本篇では詳細に解説できなかった出来事をも含めた、九州の政治史に関する年表を掲載させて頂きます。

 今や私達は、新しき年号を迎えつつあり、「平らかに成る」時代と、その先に開闢する「令月風和」の時代を謳歌していますが、この平和が成就されるまでの過程においては、瀬戸内海を始めとする日本列島での戦乱と、それに伴う数多の犠牲があったという事実を記憶し、後世にまで語り継ぐ使命がある…そう信じています。本書の主題である「西海戦争」、その発端とも言える年は、当時の暦では「未来30年」及び「光復元年」と呼ばれ、この地球に小惑星が衝突し、日本列島も隕石の被害を受けた「あの日」にまで遡(さかのぼ)ります。



原案
八幡 金吾 景綱

編著
十三宮 寿能城代 顕

解説
十三宮幸

2019年8月31日土曜日

『Planet Blue chronicle』第漆話「山口 最期の日」

なつめ

 畿内軍閥の幕下で、中國地方を統治する山陰陽都督府が、広島湾に集結させていた葡萄月大隊には、20年前の小惑星衝突に乗じて、吉野首相らを支援するアメリカ連邦軍が、九州・関東へと上陸した「ダウンフォール作戦(Operation Downfall)」に際して、彼らと戦って生き延びたバンデミエール大隊(Vendemiaire)を始めとする、旧日本人民解放軍の有用な残存将兵が、多数参加していた。また、中華ソビエト共和国やロシアからの軍事顧問団が、畿内軍を支援し、更に宇喜多清真は、アフリカ・西アジアを始めとする諸国出身の傭兵を導き、神戸など各地に布陣を展開していた。 

 一方、日本国教会の若き司教・十三宮聖は、伊豆半島の司祭・須崎優和と、騎士修道会「救世旅団」の家所花蓮らに和平工作を依頼し、静岡から瀬戸内海を渡った伊予松山(愛媛)へと遣わした。しかし…拠点に帰還した私達を待ち構えていたのは、北九州小倉(こくら)での武力衝突と、須崎司祭らの行方不明、そして山陽軍による屋代島奪回作戦という、全面戦争泥沼化への序曲であった…。



原案
八幡 金吾 景綱

編集
十三宮 寿能城代 顕

解説
十三宮幸

なつめ

2018年6月24日日曜日

Planet Blue chronicle

果楠梨世

 ロシア軍の北海道占領による第二次大戦敗北、冷戦下における米露両大国の列島争奪、独裁政権「日本人民共和国」の幻出と、その政策をめぐる壮絶な権力闘争、小惑星衝突を奇貨とした米軍上陸と民主化革命、新生「日本帝国」の誕生と軍閥割拠による列島分裂、東京と埼玉の敵対に象徴される全国的内戦、そして隕石クレーターで繰り広げられる物語など、独特の世界観を創造し続けるスライダーの会『Planet Blue』シリーズの中で、開眼すべき時代史・地域史などの各論を収録した作品集。



 地球への小惑星衝突に伴う「日本人民共和国」の崩壊後、日本列島は政治的統一を失って分裂し、東京・九州を統治する「日本帝国」、埼玉・群馬を占領した「星川共和国」、近畿・中国を支配する「畿内軍閥」など、複数の地方政権が乱立する内戦状態に突入した。

 日本帝国西海州政府首相として、九州の行政・軍事を指揮する吉野菫(よしの すみれ)は、周防長門地域の領有をめぐって畿内軍閥と対立していたが、可能な限りは外交による戦争回避の道を模索し続けた。だがしかし、山口地帯が敵方の手に落ちる事を危惧した東京・九州の軍官僚達は、独断の軍事行動で周防大島・屋代島(やしろじま)に上陸し、畿内勢との戦端を開いてしまう。不本意な開戦という現実を突き付けられた吉野首相は、同盟国であるアメリカ軍との連合作戦が予想される中、蓮池夏希(はすいけ なつき)を始めとする幕僚達との緊急軍議に臨む。

 このような動きに対し、畿内軍の謀将として山陰・山陽を守護する宇喜多清真(うきた きよざね)は、自らの信仰であるイスラム系の人脈をも最大限に駆使して、次なる聖戦(jihad)の策を着々と進めていた。一方、和平工作の密使を拝命した、日本国教会司祭の須崎優和(すざき ゆうな)は、とある修道会の主から送り込まれた若き女騎士と共に、列島の地中海たる瀬戸内海へと導かれる。

 彼ら・彼女らと共に各地を転戦する中で見えて来たのは、西国の海道を血に染めた、稀代の天下大乱であり、その陰影に蠢(うごめ)く、錯乱の魂であった…果たして私達は、この戦争の結末を見届け、生き残る事ができるのだろうか?

2017年6月25日日曜日

九州 円卓


 屋代島攻防戦は、九州鎮台・アメリカ連合軍の勝利に終わった。西海九州の枢軸、大宰府と博多湾を擁する筑前に私達が帰還した時、総司令部では陶山聖尚(すやま としなお)や諫早利三(いさはや としみつ)ら良識派将校の尽力で、既に「円卓会議」の準備が進められていた。6年前に勃発した「吉野五人衆(よしの ごにんしゅう)」達の内乱によって、九州軍は多くの優秀な人材を失い、今となっては吉野首相を積極的に支持する武官は、陶山将軍・諫早少佐・蓮池大尉など少数である。

 円卓会議は、大島事変の「戦争責任」を巡って紛糾し、首相が辛うじて議長としての主導権を維持したのも束の間、今度は同島の防衛計画に焦点が定められた。

 畿内軍閥の謀将、宇喜多清真が反撃の駒を動かすのは、もはや時間の問題であろう。山陰山陽地方には、長周を統治する山口の杉良運(すぎ よしつら)を始め、磐見の亀井無我(かめい むが)、出雲の浮田郷家(うきた さといえ)ら諸将が続々と布陣し、殊に葡萄月大隊を指揮する松田清保(まつだ きよやす)の戦力は強大である。また、畿内軍は中華ソビエト共和国(北平共産党政権)などから軍事支援を受けており、彼らにも警戒する必要がある。屋代島を守備する一方で、九州勢の次なる攻略目標は、隠岐島と馬関・下関港に絞り込まれた。

 そして、「葡萄月」が最期の戦線に誉(ほまれ)を遺さんとする頃、とある神官による和平工作の報せが届いた…。

第四話「九州 円卓」
  • 原作:八幡景綱
  • 編集:十三宮顕
「円卓の騎士は物語の作者、登場人物であると同時に聴衆となる」
(国際大百科事典)

2017年6月7日水曜日

神戸福原


 屋代島の戦いより二十年以上前、当時の日本列島は、共産主義独裁政権の日本人民共和国に支配されていた。それゆえ、日本人にしてイスラム(Islam)教徒たる宇喜多清真(うきた きよざね)は、迫害を逃れ、中東のアラビア帝国(Arabia)で亡命生活を送っていた。

 宇喜多氏と言えば、かつては毛利氏や尼子氏と並ぶ山陰山陽の戦国大名であり、関ヶ原にも参陣している。

 そんな武門の末裔と語られる清真のもとに、トランスヨルダン王国(Transjordan)からの同志が、幾つかの重要情報を伴って訪ねて来た。その一つは、日本の出羽地方において、独裁政権に対する頑強な抵抗が勃発し始めているという事。そしてもう一つは、こうした混乱に乗じて、とある傭兵の人脈を借り、マラッカ(Malacca)経由で日本に密航し、磐見(いわみ)浜田に上陸するという計画であった。

 この宇喜多清真こそが、後に畿内軍閥の中国地方司令官として、瀬戸内海を挟んだ九州に展開する私達に対し、数多の謀略戦を仕掛けて来る事になるのである。今や広大な山陰山陽道を統治するに至った彼は現在、古くは平清盛の都であった神戸福原(ふくはら)に拠点を置いている。今回は、そんな強大なる敵将の伝記を読誦したいと思う。

屋代島攻防戦


 防予諸島の主島である屋代島は、周防大島とも呼ばれ、花崗岩が大部分を構成する地質の上層に、現在はミカン畑が広がっている。

 日本帝国とアメリカ連邦の混成部隊である九州連合軍は、畿内軍閥に奪還された屋代島への、再上陸作戦を決行した。この戦闘に参陣した同盟軍将兵の中で、現在まで記録が残っている人物としては、ケリー海兵大尉・ボイル海兵軍曹(兵曹)・ワイズマン陸軍大尉といったアメリカ軍人のほか、村中讃爾(むらなか さんじ)陸軍大尉という日本人の名前も見られる。

 これに対し、彼らを迎え撃つ畿内山陽軍守備隊には、「海軍中校」長船燎次(ながふね りょうじ)と、そして「顔無し」と呼ばれた狙撃手の存在が伝わる。

 私達は、この戦争の記憶を後世に継承するべく、関係者への接触を試み、その重要な一人である、ケリー海兵大尉へのインタビューを実現する事に成功した。今回は、彼の証言に耳を傾けながら、屋代島攻防戦の実相に迫りたい。

西海之役



 地球への小惑星衝突に伴う「日本人民共和国」の崩壊後、日本列島は政治的統一を失って分裂し、東京・九州を統治する「日本帝国」、埼玉・群馬を占領した「星川共和国」、近畿・中国を支配する「畿内軍閥」など、複数の地方政権が乱立する内戦状態に突入した。

 日本帝国西海州政府首相として、九州の行政・軍事を指揮する吉野菫(よしの すみれ)は、周防長門地域の領有をめぐって畿内軍閥と対立していたが、可能な限りは外交による戦争回避の道を模索し続けた。だがしかし、山口地帯が敵方の手に落ちる事を危惧した東京・九州の軍官僚達は、独断の軍事行動で周防大島・屋代島(やしろじま)に上陸し、畿内勢との戦端を開いてしまう。不本意な開戦という現実を突き付けられた吉野首相は、同盟国であるアメリカ軍との連合作戦が予想される中、蓮池夏希(はすいけ なつき)を始めとする幕僚達との緊急軍議に臨む。

 このような動きに対し、畿内軍の謀将として山陰・山陽を守護する宇喜多清真(うきた きよざね)は、自らの信仰であるイスラム系の人脈をも最大限に駆使して、次なる聖戦の策を着々と進めていた。一方、和平工作の密使を拝命した、日本国教会司祭の須崎優和(すざき ゆうな)は、とある修道会の主から送り込まれた若き女騎士と共に、列島の地中海たる瀬戸内海へと導かれる。

 彼ら・彼女らと共に各地を転戦する中で見えて来たのは、西国の海道を血に染めた、稀代の天下大乱であり、その陰影に蠢(うごめ)く、錯乱の魂であった…果たして私達は、この戦争の結末を見届け、生き残る事ができるのだろうか?

2016年8月15日月曜日

渦 ―船上―



青野充
須崎優和

 瀬戸内は列島の両岸に広がる大洋から見比べればおよそ湖の如きものであるが、温暖な気候と豊潤な資源を以て沿岸に港を多く設け、洋上の先を行き来する人々を集めて来た。その内の1つ、神戸は幕末に開港して以来、列島有数の港湾都市として主を変えながらも発展を続けていた。

2016年8月14日日曜日

山陰山陽



 薄暗い寝室の壁に、二つの人影がロウソクの傾きに沿って揺れ映っていた。

「久しぶり。」

一人は煙草を灰皿に押し付けて、スクッと立ち上がった。

「ああ、何年ぶりかな。」

もう一人は背もたれの長い、古びた木製の椅子に腰掛けたまま、顔を上げて対面する者を見つめている。

「正直、長過ぎた。例え、あの日より一年しか経っておらなんだとしても、私には半世紀ばかりの様に感じられたよ。」

立ち上がったと共に椅子へ向けて歩み、椅子の前で立ち止まった。

「私も、君を待っていたよ。……会いたかった、ずっと。」

膝を付けそうな程に屈める相手の顔を見つめて、感涙は彼の自制を堪えきれなかった。

「勿論だとも!この日を、この瞬間を、待っていたのだから!」

椅子すらも包む様に、煙草臭い体を寄せて抱擁せざるを得なかった。

 離別の間に積み重ねられた想いは、只管に相手を抱き締める力となった。その感激は、他所者の思い及ぶ限りではない。

 椅子より相手を抱き締めながら、涙声を耳元に掛けた。

「友よ……、我が朋友よ……」

戦友はこうして再会した。