2019年9月23日月曜日

不開御陵 ―アカズノミササギ―

 2019年7月25日・木曜、直径約130mの小惑星地球に衝突した。アメリカの天文学者が、時速8万6000kmで接近する小惑星を観測したのは、前日の24日であり、気付いた時は既に手遅れだった。

 小惑星の衝突は、今回が初めてではない。30年前にも、同じような悲劇があった。あの時も、予測されていなかった小惑星が突如として飛来し、分裂した隕石雨は、地球世界を混沌に陥れた。達の日本列島も、複数の国家に分裂し、血で血を洗う戦乱が繰り返された。

 あれから30年の歳月が過ぎ、長きに及んだ内戦は終結に向かった。年号も改元され、達はようやく、平和な新時代を迎える事ができた。来年には、東京五輪の開催も決定していた。その夢は、無惨にも砕け散ったのだが…。

 今回の小惑星は、30年前とは異なり、人類文明の存亡を脅かすような質量ではなかった。しかし…達にとっては、それだけでは済まされなかった。この小惑星は、東京の範囲を丸ごと壊滅させる規模であり、その解析通り…この小惑星は、ほかでもない東京に衝突したからである…。

 8月4日、日曜。十三宮幸は、大森・蒲田の学生が結成した義勇軍「アプリコーゼン(Aprikosen)中隊」の指揮官を務めている。彼女らの教官だった(Aquila)先生が、昨年2月に首都圏を襲った「人狼事変」で戦死した結果、教会騎士団からの推薦もあり、が正式に隊長を引き受ける事になった。彼女達は、にとっても大切な後輩であり、現在のアプリコーゼン中隊が結成される以前から、協力して任務を遂行する機会があり、その頃から「先輩」「隊長」などと呼ばれていたので、人選自体に問題は無い。問題は、達が直面している現状である。

 今、アプリコーゼン中隊の生存者は、を含めても3人しか居ない。その一人…第四歩兵副隊長の斎宮星見(さいぐう ほしみ)が、江ノ島から太平洋を見詰めている。

2019年9月7日土曜日

Planet Blue chronicle年表戦史室

liya

 このたびは、『Planet Blue chronicle』をお読み下さり、誠にありがとう御座います。本書の編著において、本篇の原案・原作を執筆して頂いた八幡金吾景綱(やわた きんご かげつな)氏から、PCの故障に伴うデータ破損などの御連絡があり、事実上の休載にせざるを得ないと判断致しました。本稿では、そのお詫びを兼ねて、本篇では詳細に解説できなかった出来事をも含めた、九州政治史に関する年表を掲載させて頂きます。

 今や達は、新しき年号を迎えつつあり、「らかに」時代と、その先に開闢する「月風」の時代を謳歌していますが、この平和が成就されるまでの過程においては、瀬戸内海を始めとする日本列島での戦乱と、それに伴う数多の犠牲があったという事実を記憶し、後世にまで語り継ぐ使命がある…そう信じています。本書の主題である「西海戦争」、その発端とも言える年は、当時の暦では「未来30年」及び「光復元年」と呼ばれ、この地球小惑星が衝突し、日本列島も隕石の被害を受けた「あの日」にまで遡(さかのぼ)ります。



原案
八幡 金吾 景綱

編著
十三宮 寿能城代 顕

解説
十三宮幸

2019年8月31日土曜日

Planet Blue chronicle』第話「山口 最期の日

なつめ

 畿内軍閥の幕下で、中國地方を統治する山陰陽都督府が、広島湾に集結させていた葡萄月大隊には、20年前の小惑星衝突に乗じて、吉野首相らを支援するアメリカ連邦軍が、九州関東へと上陸した「ダウンフォール作戦(Operation Downfall)」に際して、彼らと戦って生き延びたバンデミエール大隊(Vendemiaire)を始めとする、旧日本人民解放軍の有用な残存将兵が、多数参加していた。また、中華ソビエト共和国ロシアからの軍事顧問団が、畿内軍を支援し、更に宇喜多清真は、アフリカ西アジアを始めとする諸国出身の傭兵を導き、神戸など各地に布陣を展開していた。 

 一方、日本国教会の若き司教・十三宮聖は、伊豆半島の司祭・須崎優和と、騎士修道会「救世旅団」の家所花蓮らに和平工作を依頼し、静岡から瀬戸内海を渡った伊予松山(愛媛)へと遣わした。しかし…拠点に帰還した達を待ち構えていたのは、北九州小倉(こくら)での武力衝突と、須崎司祭らの行方不明、そして山陽軍による屋代島奪回作戦という、全面戦争泥沼化への序曲であった…。



原案
八幡 金吾 景綱

編集
十三宮 寿能城代 顕

解説
十三宮幸

なつめ

2019年2月9日土曜日

Planet Blue Ich-Roman 少女達の戦争

liya
小惑星の衝突によって荒廃した地球世界。
あなた自身が主人公となって、内戦状態の日本列島を駆け抜けよう!
「…この子を、我が子を死なせはしません!何があっても、絶対に…私があなたを、必ず守り抜いて見せます!」

 あの年の夏を思い出すたびに、十三宮幸は推し量る。彼女達の眼には、百年後の世界が映っていたのではないか…と。

 天体衝突の危機から地球文明を防衛するため、人類は有りとあらゆる技術を結集し、「対小惑星隕石砲」を開発した。しかし、水素爆弾などの大量破壊兵器を搭載する事も可能なこの機構は、独裁政権やテロリストによって軍事転用され、遂に私達の祖国、日本列島にまで脅威を及ぼしつつあった。我が国の連合政府は、「反射砲」と呼ばれるレーザー兵器を実用化させると共に、対小惑星隕石砲を破壊する作戦を決行し、今この瞬間も戦闘機・攻撃機が次々と飛び立って行く。風雲急を告げる中、ミステリアスな教会の末裔にして、魔女の妹である十三宮仁(とさみや めぐみ)は、この戦争の真実を語り継ぎ、何より愛する家族を守り抜くため、約束の場所へと向かっていた。だが、そのためには、死んだ人間を復活させ、異世界への扉を開くと云(い)う、禁じられた「」の呪術が必要であった…。

 この日記を書き始めた頃、はまだ子供だった。けれど、この日記を書き終え、読み返す頃には、自身も、日本も世界も、ひいては地球・宇宙さえも、過去や現在とは異なっているだろう。それを忘れぬため、この地球世界で、日本列島で何が起き、その中で自分は如何なる運命を選択したのか、この本に記録して行きたいと思う。今この瞬間、本書を読んでいるであろう、未来の…そう、あなたのために…。

Planet Blue macrocosm

果楠梨世

 第二次大戦に破れた日本国は、ロシアと組んだ革新勢力による敗戦革命で転覆され、共産主義政権「日本人民共和国」が成立した。過酷な独裁体制のもと、弾圧や飢餓によって数百万人以上の人々が命を奪われたと言われる。しかし、小惑星衝突という惑星史上の大災害が人類文明を襲い、壊滅的打撃の中で冷戦構造は崩壊。日本人民共和国も内外の自由主義勢力によって倒され、数多の軍閥国家が割拠する内戦時代に突入した。こうした情況の中で関東平野も、アメリカと同盟する東京の「日本帝国」と、中共に支援された埼玉の「日本民主共和国」(星川軍閥)に分断され、列強大国の権益争いに巻き込まれて統一を果たせぬまま、我が国は21世紀を迎える。

 未曾有の天災に翻弄される人間、彼らの原罪が生み出した悪夢の殺戮兵器。謀略が謀略を呼ぶ乱世、度重なる戦争とテロリズム。神話が現実となった時代、新世界に跋扈する「超人」達の影。この世の終わりを乗り越えて、慟哭する受難を耐え忍び、運命に立ち向かう預言を託された日。

 激動する地球世界…ユーラシア大陸東端の弧状列島に生を受けた私達は、いかなる未来を切り開くのか?その鍵は、あの隕石が舞い降りたクレーターにあった。

 世紀末の、その先へと向かう戦記物語。取り戻せ!誇りある祖国を、失われた自由を。20世紀の戦争と革命がもたらした悲しみに、終止符を打て!

2019年1月6日日曜日

Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―


 19世紀後葉、明治維新戊辰戦争によって、江戸幕府は滅び、七百年間に及ぶ「武士の世」は終わった。250~300地域のが割拠し、更に維新軍(討幕派)と幕府軍(佐幕派)とに分断されていた日本列島は、朝廷を戴く新政府によって統一された。西南戦争などの士族反乱も次々と撃破される中で、新しき時代から取り残された武士達は、やがて歴史の陰影へと消え去った。そして、それから百五十年の歳月が過ぎた。

 数多の戦争・災害と、先般の「武蔵野事変」による混乱を乗り越えた現代日本は、長期安定政権の統治下、オリンピックに象徴される好景気によって、来たるべき新元号の時代を夢想しながら、一時の平和と繁栄を謳歌し、国際的にも、東方アジアの緊張緩和が模索されていた。だがしかし、数十年来の積弊である膨大な借金と、社会保障・教育無料化・五輪開発などの巨額歳出、そして赤字国債の際限なき濫発は、国家予算を未曾有に圧迫し、遂に財政破綻・大恐慌の悪夢を現出した。日本政府の国際的信用が失墜する中で、東京武蔵野三鷹栃木伊豆沼津など関東・東海地方の諸都市は、軍産複合国家アフィリランドの支援を背景に、自由都市としての独立性を強め、事実上の小国家群を形成しつつあった。かくして、我が国は再び分裂の危機と、再統合への挑戦、その岐路に立たされる事となった。

 一方、数年前の大震災から復興しつつあった東北地方では、ヒトの姿でありながら人肉を捕食する、「食人種」と呼ばれる人喰い族の出没が、相次いで目撃されていた。この情報を把握した、一部の都市国家や軍需産業は、食人種の生態を研究し、生物兵器として軍事利用する計画を進めていた。その結果、人間をゾンビ化させるウイルスが開発され、それはやがて、「第二次武蔵野戦争」と呼ばれる武力衝突を引き起こす事になる。正体不明の未知なる侵略者に対し、都市同盟軍は決死の迎撃を試みるが、食人種ウイルスがパンデミックし、流言蜚語が錯綜する混沌の中で、各地域の住民同士が、互いを「ゾンビ感染者」ではないかと疑心暗鬼し、魔女狩りのように拷問・処刑するという、凄惨な「リアル人狼ゲーム事件」が頻発する。

 こうした中、十三宮幸自身も教会騎士団の一員として、要塞化された東京湾に面し、羽田国際空港を擁する大森蒲田の軍管区で、戦闘に参陣する事となった。そして、緒戦から最終決戦へと至る中で、比類なき活躍を魅せた謎の義勇軍、通称「アプリコーゼン中隊」の存在を知るに至った。元号が変わりつつある今、生き残ったは、この英雄達の言行録を軸として、武蔵野戦争の軍記編纂に参画し、記憶継承に携わり続けようと決心した。達は何を得て、何を喪失し、なぜ戦わなければならなかったのかを解き明かし、それこそが、今となっては遠き日に旅立った戦友に対する、最大限の祝辞と成り得る事を祈って…。
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2018年6月24日日曜日

Planet Blue chronicle

果楠梨世

 ロシア軍の北海道占領による第二次大戦敗北、冷戦下における米露両大国の列島争奪、独裁政権「日本人民共和国」の幻出と、その政策をめぐる壮絶な権力闘争、小惑星衝突を奇貨とした米軍上陸と民主化革命、新生「日本帝国」の誕生と軍閥割拠による列島分裂、東京と埼玉の敵対に象徴される全国的内戦、そして隕石クレーターで繰り広げられる物語など、独特の世界観を創造し続けるスライダーの会『Planet Blue』シリーズの中で、開眼すべき時代史・地域史などの各論を収録した作品集。



 地球への小惑星衝突に伴う「日本人民共和国」の崩壊後、日本列島は政治的統一を失って分裂し、東京・九州を統治する「日本帝国」、埼玉・群馬を占領した「星川共和国」、近畿・中国を支配する「畿内軍閥」など、複数の地方政権が乱立する内戦状態に突入した。

 日本帝国西海州政府首相として、九州の行政・軍事を指揮する吉野菫(よしの すみれ)は、周防長門地域の領有をめぐって畿内軍閥と対立していたが、可能な限りは外交による戦争回避の道を模索し続けた。だがしかし、山口地帯が敵方の手に落ちる事を危惧した東京・九州の軍官僚達は、独断の軍事行動で周防大島・屋代島(やしろじま)に上陸し、畿内勢との戦端を開いてしまう。不本意な開戦という現実を突き付けられた吉野首相は、同盟国であるアメリカ軍との連合作戦が予想される中、蓮池夏希(はすいけ なつき)を始めとする幕僚達との緊急軍議に臨む。

 このような動きに対し、畿内軍の謀将として山陰・山陽を守護する宇喜多清真(うきた きよざね)は、自らの信仰であるイスラム系の人脈をも最大限に駆使して、次なる聖戦(jihad)の策を着々と進めていた。一方、和平工作の密使を拝命した、日本国教会司祭の須崎優和(すざき ゆうな)は、とある修道会の主から送り込まれた若き女騎士と共に、列島の地中海たる瀬戸内海へと導かれる。

 彼ら・彼女らと共に各地を転戦する中で見えて来たのは、西国の海道を血に染めた、稀代の天下大乱であり、その陰影に蠢(うごめ)く、錯乱の魂であった…果たして達は、この戦争の結末を見届け、生き残る事ができるのだろうか?