2020年4月28日火曜日

TESTAMENT Dear my Devil

紅蓮つづり

 小惑星地球衝突は、人類文明に甚大な被害を及ぼした。しかし、生き残った者達は再び立ち上がり、灰塵と化した祖国を建て直し、辛うじて21世紀を迎える事ができた。

 その一方で、かの隕石以来、全世界的規模で「異能力者」が激増しているとの情報が流布し、事の真相を巡(めぐ)って、一部の人々の関心を集めている。更に、異能力者を対象とした学園教育機関の存在や、特殊能力を悪用したテロ犯罪への対策、遂には国際組織の関与までもが噂されるようになっている。未曾有の「異能時代」を現出した、二十年前の小惑星、通称「石の魔女」…その悲劇には、一体何が隠されているのだろうか?

 そんな異能力を専門的に研究している淑女・能登彼岸(のと ひがん)は、オカルティズムの資料を数多く蔵書する「呪術博物館」に、今日も足を運ぶ。彼女が解読している、絵本のような古書は、人間と悪魔との「契約」を題材にした童話だと云(い)う…。

 「悪魔」という概念は、古今東西の様々な宗教・神話・芸術において登場し、ファンタジー作品には欠かせない要素となっている。もし、悪魔が実在するならば、彼らは「人間」をどう思っているのだろうか? そして、悪魔に対して達が抱いているイメージは、果たして正しいのか? 人界・魔界双方の視点から、人間と悪魔の「契約」の起源に迫る!…そのような視点こそが、「語られざる歴史」への鍵と成り得るのかも知れない。


2020年4月27日月曜日

2020年4月26日日曜日

TESTAMENT Dear my Devil登場人物紹介異能学園と帝國最後の魔女


 東京と埼玉の県境を流れる、荒川。これより北は、星川家が支配する農工業地帯になっている。それに対して南岸には、河川流域とは思えない、砂漠のような窪地が広がっている。ここは…18年前、あの忌まわしき小惑星の破片が、隕石として落下したクレーター(crater)の一つであり、小惑星の天体名「マガツヒノカミ」に因(ちな)んで、今では「禍津日原(まがつひはら)」などと呼ばれている。その禍津日原で今年、重要な出来事があった。それは、このクレーター地域の行政・軍事を統監する、禍津日原総督府の本格稼働である。

 禍津日原総督府は、単なる「地元の役所」的な役割だけではなく、独自の軍隊とその指揮権をも有しており、仮想敵国である星川家の監視など、首都圏の治安対策に取り組んでいる。そして…ここからが本題なのだが、総督府には「AB団」などと呼ばれる特務機関が存在し、スパイ工作員による諜報活動や、強力な傭兵部隊の育成、更には暗殺などの死事(しごと)さえも請け負う…と言われている。彼らの人脈は広く、呪術博物館に居た橘立花は、ああ見えて実は総督府の副官であり、その窓際で童話を読んでいた華道家も、特務機関の関係者である。

 元来、政治的な駆け引きを任務とするはずの情報機関が、どうしてオカルト分野に関心を抱いているのか? そもそも、ただでさえ人目に付きにくい隕石クレーターに、軍隊付きの総督府を建設し、御丁寧に特務機関まで用意したのは…何故か? その理由は、やはり偶然ではなかった。是が非でも調査しなければならない対象を、彼らは見付けてしまったのである。それは…。

TESTAMENT Dear my Devil第Ⅰ話童話 Marchen



「もう終わりだ! 何もかもお仕舞いだ! あれ以来、ずっと頑張って来たけど、無理だった! 変えられなかったんだ! 学園がああなるのを止められなかった時点で、この結果は決まっていたんだよ! 未來(みき)ちゃん、逃げよう! ボク達だけでも! は、運命は…やっぱり理不尽(Unreasonable)だったんだ!」

「…もう一度…皆が手を取り合えたなら……こんな事には…ならなかったのに…」

 全ては、眼前に迫る極大の絶望と、その間隙(かんげき)に光る極小の希望、両者の確率を巡る葛藤から始まった。そしてその切っ掛けは、一つの理不尽な出来事であった…。

あん子

第Ⅰ話「童話(Marchen)
  • 原作:TeraByte
  • 編集:十三宮顯(とさみやAquila)
  • 解説:十三宮幸
池村ヒロイチ

2019年9月23日月曜日

不開御陵 ―アカズノミササギ―

 2019年7月25日・木曜、直径約130mの小惑星地球に衝突した。アメリカの天文学者が、時速8万6000kmで接近する小惑星を観測したのは、前日の24日であり、気付いた時は既に手遅れだった。

 小惑星の衝突は、今回が初めてではない。30年前にも、同じような悲劇があった。あの時も、予測されていなかった小惑星が突如として飛来し、分裂した隕石雨は、地球世界を混沌に陥れた。達の日本列島も、複数の国家に分裂し、血で血を洗う戦乱が繰り返された。

 あれから30年の歳月が過ぎ、長きに及んだ内戦は終結に向かった。年号も改元され、達はようやく、平和な新時代を迎える事ができた。来年には、東京五輪の開催も決定していた。その夢は、無惨にも砕け散ったのだが…。

 今回の小惑星は、30年前とは異なり、人類文明の存亡を脅かすような質量ではなかった。しかし…達にとっては、それだけでは済まされなかった。この小惑星は、東京の範囲を丸ごと壊滅させる規模であり、その解析通り…この小惑星は、ほかでもない東京に衝突したからである…。

 8月4日、日曜。十三宮幸は、大森・蒲田の学生が結成した義勇軍「アプリコーゼン(Aprikosen)中隊」の指揮官を務めている。彼女らの教官だった(Aquila)先生が、昨年2月に首都圏を襲った「人狼事変」で戦死した結果、教会騎士団からの推薦もあり、が正式に隊長を引き受ける事になった。彼女達は、にとっても大切な後輩であり、現在のアプリコーゼン中隊が結成される以前から、協力して任務を遂行する機会があり、その頃から「先輩」「隊長」などと呼ばれていたので、人選自体に問題は無い。問題は、達が直面している現状である。

 今、アプリコーゼン中隊の生存者は、を含めても3人しか居ない。その一人…第四歩兵副隊長の斎宮星見(さいぐう ほしみ)が、江ノ島から太平洋を見詰めている。