2014年9月28日日曜日

家所花蓮

 宇喜多のもとを訪れる須崎優和の護衛を務めた女性。十三宮聖が信徒をクライアントとする天主教武装派閥の戦闘集団「救世旅団」から派遣を要請した人物で、広島にて襲撃して来た三好の暗殺者を退けるなど役を果たした。

 和平交渉を阻みたい各陣営の悪意が解き放った怪人 八洲余一とイザナミ発動の切っ掛けを欲した東京の極右派閥により戦争継続(無制限潜水艦作戦の再開を見込み)を謀り送り込まれた城井宗房の率いる戦闘員の襲撃から須崎達を守るために奮戦したが重傷を負い、結果的に手負いの身が発した肉の匂いを悟られたため須崎を無理矢理家屋に押し込んで別れを告げ、余一に一矢報いんとして叶わずそのまま惨殺された。余一はこの後、須崎と彼を用済みと見た城井により海中へ沈められたが、須崎は八洲配下最強格たる「四方之魔」城井宗房と対峙、一人で戦う事を余儀なくされた。

 家所花蓮は救世旅団の伊勢の協力者である家所氏の亡くなった娘の名前であり、本名は別にある。両親は日共の構成員で、逃げる時に足手纏いとして、逃亡の資金源として売り飛ばされた。幼子は後の雇い主たる血族の当主(実は代行)「マザー・N」に拾われるまで人間界の家畜として生きてきた。幼子は長じて異端相手の殺し屋になったが、これは彼女が経験の中で死体と「死」に馴れていたためマザー・Nに選ばれたからである。なお、両親については須崎へ当初「行方知れず」と言ったが、実際は彼女自身が命乞いする両親を殺害しており、その事実を余一との戦闘前に白状している。これは花蓮には偶然だったが、福原で醜業を命綱にする日共残党を宇喜多が歓楽街ごと叩き潰した際にマザーから派遣されて事に及んでおり、両親との事が心に残る花蓮を信徒の槍に変え切るためマザーが承知で送り込んだ結果である。これ以後花蓮は自らを信徒の槍と認め、罪科ある信徒の贖いとして異端討伐を第一に生きた。しかし、須崎や宇喜多や山路など山陰陽で出会った人々との関わりが彼女を迷わせ、在り方を見失い苦しんだ。結果、花蓮は八洲と事を構えたくないがためにクライアントを捨てて退却するようにとのマザーからの命令を黙殺して須崎や木内を助け、命を散らす事になった。

 女性用ビジネスウェアを着込み、イタリア製の時計や鞄を持ち歩いている姿は凛々しく美しいが、それらは全て工作員専用アイテムであり、彼女には自身を着飾る事など考えられない。加えて人殺し以外にはする事もないため正直人生に楽しみなどなく、任務以外においては他人の生死にも関心がない。但し、マザーから「飢え」についてはトラウマをえぐられているため、「飢え」を恐れるために殺人兵器としての寿命を保とうとする…という本末転倒な事をしている。ゆえに山陰陽での経験は彼女をただ戸惑わせるだけであり、死を前にして芽吹いた感性がかえって恐怖を招いている。

 マザーは花蓮達救世旅団構成員(皆青年男女の殺人兵器)の実態を知った聖から「それでも信徒数万を率いる長か」と非難されるが、マザー自身は命令に背いて死んだ花蓮の事を既に忘れており、聖を絶句させている。花蓮は報われず、ただ苦しんで死んだ。せめてもの救いは「花蓮を忘れない」と須崎や木内に思わせた事だけである。

 なお、マザーは長州戦争終結後、救世旅団の件を世間に公表されるかも知れないと考え須崎や聖を狙った。が、花蓮の件を逆恨みした木内と契約し、マザーを用済みとした血族の真の惣領から依頼された城井宗房により殺害、契約に従った城井によって「せめて人間らしい死に方なんて与えないように」骸を処理され無数のゴミと共に世を去った。

 花蓮の墓は無名戦士墓地にある。

0 件のコメント:

コメントを投稿