2015年1月14日水曜日

大牧実葉

ゆーりい
観天察人
―諸行無常の立会人―

 禍津日原第四学校の実権を握る、ミステリアスな地理科教員。幼名「大間木(おおまぎ)美野波」。



人造人間「大間木美野波」
 誤魔化すのも面倒なので結論から言うと、彼女は人間によって造られた人間である。かつて日本人民共和国の科学者達は、自身らが神を超越した存在となるために不老不死の技術を追究し、非人道的な人体実験を繰り返した末、遂にクローン人間の開発を部分的ながらも成功させた。その一人が日共の主席に祭り上げられた滝山未来であり、そしてもう一人がサンプル名称「大間木美野波」であった。大間木は滝山とほぼ同じ遺伝子を持っているものの、細胞発生過程における僅かな差異により、通常のヒトには勝るが滝山よりは劣った能力を持つ「失敗作」だった。このため「廃棄物」として「殺処分」される予定であったが、驚異的な速度の傷病回復能力を有するため取り扱いに難儀し、義理の両親に養育される事になった。なお、「大間木」も「美野波」も当時の埼玉県(現在の武蔵県)にゆかりのある古地名であり、里親もこの地域の関係者である可能性が高い。

少女時代
 大間木は東京・埼玉の県境に位置する外東京コミューン(後の禍津日原)に暮らし、紅衛兵(「人民の敵」と見なした者を独断で虐殺する少年兵)の葉山円明と親交を結ぶ。葉山は周囲の誰よりも強く共産主義思想を奉じ、日共に歯向かう者を皆殺しにする事が正義だと本気で信じ込んで行動していた。ゆえに「悪魔の少年兵」と恐れられ、「正しい事をしているのに」友達がいなかった。大間木はそんな葉山に興味を示し、正義感と狂気に満ちた彼の話をよく聴き、彼と一緒にいる事で互いの孤独を舐め合った。また、人民学校(現在の初等学校に相当)の天河和茂とも仲良くなり、時代の制約こそ大きいが、それなりに普通の女の子として生きられるはずだった。だが…。

別れ
 大間木には義理とはいえ両親がいたが、葉山にはいなかった(自分が殺したから)。それが気に入らなかった上に、葉山の心中はいつしか、大間木を独り占めしたいという「資本主義的な」願望に犯されていた。葉山は大間木の両親を政治犯の容疑で告発し、強制収容所に閉じ込めた。それでも大間木は葉山を見限らず、彼の親友であり続けようとした。だが、それも長くは続かなかった。未来30年(光復元年)の小惑星衝突により、隕石が直撃した外東京コミューンは壊滅。両親は即死して灰塵に散り、葉山とも離れ離れになった。一帯は灼熱地獄と化し、大間木も意識を失いかけるが、その異常な生命力ゆえ生き延び、陥落した東京から栃木県宇都宮に撤退途上の遠野衛(彼女も肉体を強化されている)によって救助された。滅亡した日共に代わり、自由主義国家「日本帝国」が開闢され、日本は「自由の国」に生まれ変わったが、大間木にとっては全てを失ったも同然だった。

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「日共残党」の誕生
 多くの家族や友人を失いながら、自分だけ生き残ってしまった大間木は、精神を崩壊させたまま成長し、自殺未遂を繰り返した。だが、どんなに我が身を傷付けてもすぐに細胞が再生してしまい、死ぬ事は叶わなかった。一方で、葉山・天河ら一部の仲間達は辛うじて生存しており、間もなく再会を果たす。「偉大な祖国」を失い、世間から疎外された彼ら「日共少年少女」達は、同じ境遇の人々や他のアウトロー・アングラ系集団を糾合し、禍津日原を拠点にテロなどの犯罪活動を行う、一般に「日共残党」と総称される武装勢力となった。その過程で、大間木が常民の能力を超越した「特別な人種」である事が知られ、また亡き日共主席たる滝山の血を宿すという情報もどこからともなく広がった。そして、滝山が日共政府の国家元首に祭り上げられたのと同じく、大間木もまた日共残党の「教祖」に担がれ、「日帝打倒・日共再建」といった空虚なスローガンのもと、来たるべき「ユートピア社会」への生贄として惨劇が繰り広げられた。

禍津日原「三帝」会戦
 もとより、こうした情勢を日本帝国東京政府が放置するはずもなく、禍津日原に赴任した西宮堯彦落合航太田愛らによる討伐軍が編成された。また、アウトロー集団の中にも日共残党を嫌悪する勢力がおり、殊に「堕ちたる者」八洲精士郎やら「四方の魔」宇都宮宗房やらといった出自不明の浪人衆は、「穢れた『泥土』を浄化する」などと称して(恐らく政府に無断で)残党軍への無差別攻撃を行っていた。討伐軍・残党勢・浪人衆の三者は、未だ隕石火災の匂いが残る禍津日原にて衝突し、大間木自身も八洲と決闘する。八洲は大間木の着けていた仮面を日本刀で真っ二つに割り、正体が少女である事に戸惑いを覚え、せめてもの情けで首筋は狙わず、彼女の手足を無力化しようとした…が、切っても斬っても瞬く間に再生するためキリがない。対する大間木は、戦闘方法などほとんど分からなかったものの、亡き両親が庭の手入れに使い、後に自身が自殺未遂に使ったチェーンソーを取り出して応戦した。その後、近代兵装を有する西宮ら討伐軍が喧嘩両成敗しに来たため、双方とも一旦は武を偃せ、とりあえずクレーター復興庁に保護される事となった。

希望
 大間木を救助した遠野衛や、遠野と対立しながらも彼女同様に日共再建を企図していた樹下進は、将来的な再起に備え、かつての部下に当たる日共残党を自派に取り込もうとした。一方で、西宮・落合ら反共グループも、捕らえた残党出身者を更生・社会復帰させる事で天下の安寧を図ろうと考えた。こうした各勢力の思惑が交錯する中で、大間木らは公教育を受ける機会を得、大間木は自分探しのため、葉山円明は革命家として理論武装するため、表面的には日共残党と距離を置き、修学の道を選んだ。この頃、「荒野の大地に葉を実らせるような力を得たい」という意味を込めて、姓名を「大牧実葉」に改めた。一方、討伐を逃れた天河和茂ら直接行動主義派は、資本主義権力との妥協を潔しとせず、その後も大牧を指導者と崇めつつ、独自に武装闘争を継続した。

十三宮聖・樹下進との出会い
 葉山・天河とは異なり、共産主義イデオロギーを格別強く信じているわけではなかった大牧は、人生観・世界観を追い求める哲学の旅に出て、様々な思想・職種の人々と出会った。その中で、特に印象に残った人物が二人いた。一人は十三宮聖という隠れキリシタンで、大牧より年下であるにもかかわらず、唯一絶対神による天地創世から、人間の生きる意味に至るまでの教義を丁寧に説明し、大牧もあと一歩で入信するほど感心した。もう一人は、進化論・脳科学の第一人者として有名になりつつあった、樹下進という人類学者だった。彼は宗教の対極にいるような人物だが、科学技術とそれに基づく社会経済の革新によって人類が永久に進歩し、生老病死の苦しみから解放された「輝く未来」の待望を熱弁する姿は、隣人愛の素晴らしさを説く聖とよく似ていた。恐らく自分は、文系か理系か、科学か宗教かといった二者択一ではなく、むしろその狭間にある何かを探し求めているのではないか、大牧はそう思った。宇宙から撮影された地球の写真を眺めていた時、それは確信に近付いた。世界は広い、人間は小さい。しかし、万物は何らかの因果律で相関している。そして自分も、本当は決して孤独ではない。神であれ理性であれ、運命であれ法則であれ、その中で自分の果たすべき役割がきっとあるはずに違いない。ここに、「ヒト型の人工生命体」大間木美野波は、「人間」大牧実葉として生きる事になった。

学生時代
 優等生やお金持ちでなくとも、修学意欲と時間さえ僅かでもあれば、安い学費で教育を受けられる帝都学院自由大学に入学し、主として地理学を学び、測量士資格や学校教諭免許の取得にも成功するなど、充実した学生生活を送った。同じ頃、葉山円明は東京帝国大学に在籍し、日共出身の極左教授陣(この中には樹下もいた)に師事して革命理論を猛勉強し、反政府デモなど急進的な学生運動(天河ら日共残党から支援を受けた)で大学本部から警戒されるなど、別の意味で非常に充実した学生生活を送っていた。

禍津日原第四学校
禍津日原の復興を着々と進め、治安の大幅な回復を成功させた西宮堯彦は、同地への学校誘致計画に着手し、日共残党とは思えぬ立派な学士に成長した大牧らにも協力を求めた。好都合な事に、大牧は測量資格と教員免許を両方持っていたので、測量士として校舎建設に携わった後、そのままこの学校で働けるという面白い条件に恵まれ、この役目を快諾した。一方、「革命家」を本気で目指していた葉山も、今すぐに帝国政府を打倒するのは不可能である事を理解し、まずは教職員組合などを通して、労働者の現場から革命準備を進めようと考え、大牧の誘いに応じて禍津日原学校に就職した。このほか、樹下の子飼い愛弟子である間宮歩や、後に十三宮教会信徒の布施朋翠(聖の親友)が教壇に立った。更に、天河和茂や雪花晴久といった残党関係者は自分の子供達を入学させ、自らは「保護者」として反体制的な正体を隠しつつ、大牧・葉山・間宮との極左人脈を強化した。こうして西宮の善意とは裏腹に、禍津日原学校は共産主義者の巣窟になってしまいかねなかったが、大牧・間宮は政治闘争と距離を置き、布施朋は教会と西宮に忠誠を誓う反共右翼であり、学校全体としてはどうにか中立性を保っていた。だが、葉山は公然と集団主義教育(「個性尊重」を謳いながら実態は極左思想に洗脳し、反対者を「総括」するソビエト式の教育理論)を実践したため辞職を余儀なくされ、政官界に転身する事になった。

石英ガラスの闇
 地質学者の間宮と共に、「地形学研究室」という名の理科室を開設し、ただ授業を行うだけでなく、自分達も研究を続けた。禍津日原には、隕石衝突の熱で融解した二酸化硅素などが凝固した天然ガラス鉱物(テクタイト)が多量に散乱しており、これを収集するのが二人の日課だったが、大牧にとっては別の意味もあった。隕石の直撃で即死した両親や旧友達は、遺骨もろとも融け砕かれ「千の風」になってしまった。つまり、禍津日原の天然ガラスには、彼らの肉体の一部が微粒子として含有されている可能性がある。大牧はまるで、故人の遺骨を拾うかのようにこのガラスを執拗にかき集め、アクセサリーとして身を飾ったり、あるいは研究室の机に際限なく積み上げたりした。この作業をしている時の彼女は、いつにも増して悲愴な表情をしていた。しかしまた、このテクタイトにはもう一つの秘密がある。かつて外東京コミューンと呼ばれた禍津日原には、滝山未来の遺伝子情報が保管されており、隕石衝突によって粉々になったものの、その断片は融けたガラスに包み込まれる事で保護された。大牧がいつもネックレス・ペンダントとして着用している水晶型のテクタイトには、この遺伝子情報が高精度で保存されており、それを利用すれば、滝山未来を「復活」させたり、あるいはクローンとして量産する事も可能だという説がある…。

八月事変
 光復20年、聖の妹である十三宮仁が入学し、雪花晴久の娘である雪花晴華も同学年に入った。その年の夏、埼京国境紛争に乗じた同時多発テロが発生するが、大牧は首謀者の一人である天河和茂を「迷惑極まりないから、やめてね」と説得(チェーンソーで脅迫)して停戦させ、事態の収束に尽力した。翌21年には、和茂の養女である天河瑠璃が仁・晴華らの後輩として進学した。帝国政府による日本列島統一が現実味を帯び、学校内の雰囲気も落ち着きつつある中、大牧は時代と世代の移り変わりを感じながら仕事に励んでいた。そんな中、愛国者に偽装転向して政府に入り込んでいた葉山円明から、恐るべき計画を告げられる。日基建首相を暗殺して帝国政府を乗っ取り、更に米国との太平洋戦争を再発させ、その混乱に乗じて日本人民共和国の復活を宣言し、あわよくば世界革命を起そうと言うのである。大牧は計画の無謀さを指摘し、思いとどまるよう繰り返し説いたが、樹下に「いつ造反するの?今でしょ!」(要約)と煽動されていた葉山は聴く耳を持たない。かといって計画を政府側に密告すれば、婚約までした親友たる葉山を裏切る事になってしまう。一方で西宮率いる禍津日原総督府でも、落合航や十三宮勇(聖の双子)らが中心となって、大牧と共産主義者の交際を疑い、彼女を不穏分子として拘束(場合によっては暗殺)する作戦が謀議されていた。一学期の仕事を片付けた大牧は一時的に身を隠し、どうにかして葉山の暴発を阻止しようと試みるが、時すでに遅かった。政権を掌握した葉山は、これに従わない禍津日原総督府を討つべく東京の大軍を動員し、大牧もその「参謀」に任命された。やむなく大牧は一隊を率いて禍津日原の旧校舎付近に陣を展開したが、最初から敗戦を予想していたため、味方の損害を防ぐため必要最低限の指揮しか行わず、あまり積極的には戦わなかった。その一方で、葉山がこの世界を滅ぼしてくれるなら、それはそれで良いのかも知れないという諦めの気持もあった。対する反葉山連合軍では、大牧や葉山の傷付いた魂を救いたいと願う十三宮聖が、迷っている大牧を調略して寝返らせ、それによって葉山の降伏を促し、事変を平和的に解決せんと奔走した。

地理学者の使命
 最近は禍津日原総督府と東京政府の関係に関心を抱き、社会科の布施朋翠と共に地域研究を行っており、泰邦清子など右翼学生からも協力を得ている。そしてその成果を、自身の日記と交えた散文として執筆している。後に、長谷堂舞ら「スライダーの会」と称する同人サークルが、『Planet Blue』というゲームシリーズを制作する際に、この文章を参考文献に使用するなど、歴史的史料としての価値も高い。

永遠の生命
 滝山未来と同じく、不死身に近い遺伝子を有し、「死にたくても死ねない」と嘆くほどの高速再生能力を持つが、生命体である以上、完全に無敵というわけではない。通常のヒトと同じく、その弱点は心臓であり、これらが大きく損傷すると、細胞再生命令の伝達や血流に支障が生じ、やがて死に至る。同様に首を斬られれば、脳と心臓の連携が不可能になるため、これも致命傷になる確率が高い。また、滝山に成り損ねた「失敗作」であるため、滝山のように不老ではなく、年齢と共に成長する。寿命にも大きな「欠陥」があり、更なる遺伝子の改造を行わない限り、通常のヒトより早く死亡する可能性もある(本人曰く「不治の病」)。これを大幅に延命する技術を知っているのは、彼女を創造した張本人、樹下進ただ一人である。

特技
 彼女の言葉には何らかの催眠効果があり、その気になれば他者の心を自在に操れる、一種の特殊能力者である。但し、同じく異能者である十三宮家などの人間相手には効果が限定される。もともと人間観察が非常に得意だが、ヒトの血を飲む趣味があり、教え子が出血を伴う怪我を負うと、「手当て」と称して吸血する。そして、血中に宿るとされる当人の潜在意識・深層心理を言い当てる事ができる。天才的思考の持ち主という一面もあり、ボードゲームや戦略シミュレーションでは驚異的な実力を示すが、普段は爪を隠している。

禍津日原学校の正体
 「多くの『実験動物』を飼育したい」という願望のもと、自殺志願者や逃亡犯などを甘言で洗脳し、記憶を書き換えて学生にしている。辛い過去を忘れたお蔭で新たな人生を送れる者もいるが、行く当てがない者は卒業してもその記憶を消され、大牧の「モルモット」として永遠にこの学校に通わされるという。禍津日原では「浦島現象」らしき幻覚が発生し、学生はクレーターの中にいる限り年を取らないらしい。しかし、こうした奇怪な行動は、彼らをこれ以上不幸にしたくないという本心と表裏一体である。今これを読んでいるあなたがもし、自分の人生に思い悩み、誰でもいいから救いの手を差し伸べて欲しいと思った時に、「禍津日原でカウンセリングをやっています」というメールが届いたり、そんな内容のウェブサイトを見付けたりしたら、気を付けたほうが良い。もっとも、彼女の催眠術から逃れるのは至難の業であり、その頃にはもう手遅れかも知れないが…。

性格
 是非はともかく、常に「熱血教師」とは正反対の道を行く人。当初は「とにかくひたすら無表情で、笑う事も怒る事もない先生」として知られていたが、教え子達との関わり方に慣れるに従って堅物から丸くなり、次第に感情を示すようになった。それに伴ってお姉さん的な色気も増し、遂には男子学生を誘惑するなど単なる「イケナイ女教師(ただの変態)と成り果てつつあるが、それは彼女自身の人生を前向きに捉えられるようになった証でもある。基本的には好人物だが、従順な教え子を「モルモット」と呼んで実験動物のように扱うなど、冷酷な一面もある。趣味は空を眺めながら人間と世界について思索する事、そして「モルモット」で遊ぶ事。机上の作業に疲れた時は、自らが掘り当てた校舎裏の温泉(周囲が熱帯雨林のビオトープになっている)に浸っており、この場所を発見できれば先生と一緒に混浴も可能だ!

戦闘能力
 校内の木々を間伐する仕事を趣味で請け負っているが、血痕まみれのチェーンソーを持ち歩く姿は殺人鬼にしか見えない。そしてこの武器は、物理的な意味だけでなく、人間の心そのものを「解剖」し切り取る力を象徴している。
  • 属性:(敵を凍結させる)または(体力吸収)
  • 通常攻撃:チェーンソー(クリティカルヒットする毎に相手の記憶が一つ消えるw)
  • 特殊攻撃:テクタイト散布(広範囲に攻撃可能)
  • 空中攻撃:分厚い図鑑を投げる(かなり痛いので注意)
  • 必殺技:流星雨(周囲が焦土と化す)
  • タロット:0「愚者」(全てを知っているが、誰にも語らず、誰からの理解も求めない者)
ゆーりい水菜

liya

Tome*Tome*

四ノ原
liyaliya
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キャラクターなんとか機

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