2014年9月17日水曜日

難波香奈

 九州派防長県令飯田を白昼暗殺した女性、防長争奪戦の切っ掛け。罪科ゆえに社会的に抹殺された後「山路香奈」として人生をやり直す事になる。山路兵介曰く「公務妹」。

 横須賀生まれ。工場労働者の娘で、横須賀の造船所を眺めながら成長した。

 高校卒業後働き出したが、横須賀にて発生したゼネストを発端にした暴動の鎮圧のために出兵した東京軍の火事場泥棒兵に団地ごと家を燃やされ、父と母を惨殺され、弟妹は共に猟奇乱暴された。香奈は傷心しながらも残された家族のために仕事に奮気したが、心を病んだ弟が非行に走り、その余波を受け妹が虐められ自殺。弟も禍津日原を闊歩する不良集団の一員になったが、集団がギャング化したために危険視されて八洲精士郎率いる八洲隊に襲撃された。香奈は半死半生で救いを求めた弟を城井宗房が目の前で「破壊」したショックで流浪し、地下組織化した日共残党に拾われた。

 日共残党が上野戦争で討伐される中、殺せもせず、死も恐れた香奈は逃げ出し、宇喜多清真の工作員に気紛れに拉致される。そのまま刷り込みを受けて駒となり、暗殺当日は錯乱状態で飯田を暗殺した。捕縛されると「開戦理由」として扱われ、陥落した周防大島従軍兵の遺族から「気狂い紅衛兵」と罵倒され虐待を受けた。獄吏には報復として強姦目的で殴打等の暴力を受け、結果的に口封じのため福原へ護送される間に山路兵介が始末する事となった。しかし洗脳され暴力に苛まれ、衰弱しきった香奈の、許しを乞う姿勢に情が移った兵介の独断でそのまま福原へ護送。策将として非情卑劣な行いをしながらも、老いて人並みに情に脆くなっていた宇喜多の「精一杯の咎め」として山路兵介は香奈を兄妹として扱わされ、彼の家に(突貫で)設けた座敷牢に幽閉する事となった。

 牢の内とは言え漸く身の安全が保証された香奈だったが、宇喜多が攻勢を強める九州軍を抑制するために招いた須崎優和が講和に反対するマスード達傭兵隊に夜襲を受けて宿を追われ、山路兵介邸に逃げ込むと、告悔を須崎から得る事を約して彼女の着用したシスター服を香奈が纏い、山路兵介の護衛をつけて偽装の上 福原政庁に逃げ込むまでマスードの手先の追撃を引き付けていた。その間に須崎優和を護衛する様に宇喜多から命じられた浮田郷家の手勢が山路邸に入り、マスードの謀事を防いだ。須崎は十三宮派司祭として座敷牢内にて告悔を執り行い、十字架を授け、香奈に海洋深層水の年間購入契約を山路兵介の名で結ばせた。以後、山路邸は須崎の販路拠点となった。仮にも共産主義者に名を連ねた香奈が拝金主義者の手先に「堕ちた」瞬間だった。

 元々大人しい女性で、災難続きに伴う精神汚染により凶行を犯した。飯田県令も刃を突き立てた際に我に返った彼女を見て、「要らぬ罪を…目を覚まさぬか」とナイフの柄から手が離れない香奈の顔を打っている。宇喜多としては早々に始末してくれるものと考えていたが、殺害されずにいたためにやむなく上記の結果に至った。

 身体の発育の良い、精神的に未熟な女性であり、苛酷な時代を自力で生き抜いた須崎優和や宇喜多清真からは「生きる力が足りない」と言われている。マスードと座敷牢の格子ごしに偶然面会した折りには「子供」として扱われ、ひたすらに精進を重ねる様に諭された。告悔をした事で一応キリシタンになっているが、発想が家族の幸福な転生を願うなど東洋の信教感を抜け切れていない(つまり教義を理解できていない)。しかし、「公務兄」として彼女の面倒を見る山路兵介の希望で座敷牢より出て、「山路香奈」として生活すると、宇喜多や須崎を始めとした先達の背を見て成長し過去を乗り越えて、須崎と木内を殺害せんとする、かつて弟を「破壊」した八洲の怪人城井宗房と対峙し精神的には互角となって彼に久方振りの任務失敗を味合わせる。あくまで過去からの連続によって培われた己を固く守るマスードと、過去を結局捨て切れずに凶行に走った蓮池夏希とは異なり、どうにか未来に望みを見出せた。

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