2015年9月6日日曜日

入谷枯桐

唯生即理

 十三宮家に出仕する怪僧、黒衣の宰相。

 カネと暴力に明け暮れた日々を過ごしていたが、そんな生活がいつまでも続くはずはなく、破産して失踪。家族も財産も何もかも失い、次いで自らの名前を、最後には誇りさえも捨て、「霊感商法」と馬鹿にしていた宗教に助けを求める屈辱を経て生き延びた。そこで知り合ったシスター服の聖職者が、かつて借金していた高利貸の女と酷似しており不穏だったが、ほかに行く当てもなかったので、そのまま従う事になった。ところが、彼女と共に上野不忍池の教会堂を訪れた際、日共残党の無差別テロに遭遇し、自身も聖域を鮮血に染めるほどの暴行を受けたが、死ななかった。それ以来「死にたくても死ねない生き地獄を生き続ける宿命を負っている」などと称し、十三宮家に勤めながら宗派不明の怪僧「枯桐」として、一部にその存在を知られる事となった。

 年齢不詳だが、かつては子持ちの夫婦だったらしく、棟梁の十三宮聖より年上であり、臨機応変に種々の智慧を授ける。各地で拾った武器を、一見清貧な修道着の内側にコレクションしており、戦時にはこれらを駆使して味方を守護するなど、元「人間のクズ」とは思えないほど真面目に活躍する。特に家所花蓮の死後、「もう二度と死なない護衛役」として重宝され、コミュニストや軍部青鳥閥の動向に対処した。

 過去の罪から逃れ続けていたが、戦乱の時代が終局に向かうに及んで、ある人物への懺悔を成し遂げたいと発心し、折しも東京星川連合軍と青鳥閥との決戦を迎えていた房総半島銚子に乗り込んだ。しかし、その者はこの戦闘で非業の死を遂げてしまい、贖罪を果たす事はできなかった。また、なぜか清水財閥に恩を感じており、戦後は財閥の存続・再建を陰から支援し、反清水派怪死事件の黒幕とも言われる。

 なお、高利貸の正体が(どうせ)須崎優和であろう事はほぼ確実だが、その証拠となる当の金融業者が上野戦争前後に(札束もろとも)壊滅してしまい、須崎自身もテロリストに襲撃されるという「天誅」を喰らったので、十三宮聖もそれ以上の追及はしなかったようである。

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